ジョーカーが教えてくれた人生哲学
社会的弱者でも武器を手にすれば強者の立場を奪える
ジョーカーの人生を変えたのは同僚が護身用に渡した一丁の「拳銃」でした。
初めて人を撃ったあと、部屋の隅で丸まり震えるのかと見ていたら、ジョーカーは踊りはじめました。気分がよかったんです。
コメディアンを目指しスマイルにとらわれているジョーカーですが、皮肉なことに心から嬉しいときには、真顔で優雅に踊ってしまいます。 (ジョーカーにとって笑いは、精神疾患を抱えていることからもわかるように、負の感情として表出します。笑いたいときに笑うのではなく、緊張や不安から笑ってしまう。)
拳銃を手にしたことをきっかけに、自分が我慢するのではなく相手を殺せばいいんだと気づいたジョーカー。
見つけた「拳銃」はジョーカーにとって、今まで勝てなかった相手をいとも簡単に消すことができて、自分を苦しめている存在から解放してくれる神アイテムだったんです。
格闘技を習う必要もなければ、勉強する必要もないんです。映画を見て「人に勝つにはこういう方法があったんだ」ってハッとする人もいるはず。
正義と悪が武器をもって対等に戦う映画はよくありますが、弱者があっさりと強者に勝つ映画ってあんまりないですよね。
なんでないのかなって考えてみたんですけど、「社会的弱者は武器を手にすることで簡単に強者の立場を奪える」っていう発想は、弱者が気付いてはいけない真実なんじゃないかなって思いました。
「社会的弱者でも武器を手にすれば強者の立場を奪える」 って本当にその通りなんですけど、そんなことをして生き残った人たちばかりの世界が平和なわけなくて。
例えばの話、ウイルスが蔓延して感染拡大防止のためにみんなでマスクを使用しないといけない状況で、マスクが先着順で販売されときに、「駐車場が小さいので車での来店は控えてください」と言われても、車を所有していたら「ちょっとくらいいいじゃん」と思って車で向かう人が現れます。
自分のことで精一杯になって他人を思いやれなくなってしまうのは仕方ありませんが、そんな人の数は、ちょっとではなく、たくさんいます。
困ったときにどうすれば抜け出せるか思いつくことはだいたい同じです。
ましてや、自分のことで精一杯の人間が、脚がなくて困っている赤の他人を思いやるなんて、まずできないでしょう。
だから私たちは拳銃を手にすることを許されないのです。
そして、この映画が恐ろしいのは、弱者が「拳銃」に代わる物の存在に気づいてしまいかねないところ。
昨今の新型コロナウイルスがまさにそう。
インフルエンザは発症すると、高熱が出るので自然と家で大人しくするため感染拡大が抑えられますが、新型コロナは発症しても多くの場合が軽症で自由に動きまわれます。
致死率が低いからと、感染を軽視する人が増えてしまったら?
わたしが権力者だったら、命をおびやかす見た目では区別できない軽症の感染者が身近に忍び寄るのを恐れるでしょう。市民に近づくたびに、その人がポケットに拳銃を隠し持っているかもしれないと疑わずにはいられないなんて恐怖以外のなにものでもない。
見た目ではゾンビとわからないゾンビが登場するゾンビ映画なんて、主人公でも生存不可避です。
社会的弱者にとって、新型コロナウイルスは、同僚に渡された拳銃のようなものなんです。
「ちょっとくらいいいじゃん」と思っていると、無意識のうちにジョーカーのようになりかねません。有名司会者を殺してしまうのもよく似ています。
現実社会で殺し合いがはじまろうとしているとき、仮に拳銃を手にしてしまっても、拳銃を持って街をうろつかず、誰も傷つけないうちに拳銃を手放さないといけない。
それは、他人のためにではなく、自分や家族を守るためです。
人生一発逆転したい人がこの映画をみると、拳銃を手にしたくなるので、先に警告しておきます。
ジョーカーの基本情報
原題 | Joker |
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公開日 | 2019-10-01 |
言語 | 英語 |
作品時間 | 122分 |
出演 | ホアキン・フェニックス, ロバート・デ・ニーロ, ザジー・ビーツ |
監督 | トッド・フィリップス |
あらすじ
1981年、犯罪が多発する大都会ゴッサムシティ。ピエロの仕事をしているアーサーは貧しく、老いた母親ペニーと暮らす上、突然笑いだしてしまうという心の病に悩むが、TV界の人気司会者フランクリンを憧れの対象にして日々耐え忍んでいた。ある日、失業したアーサーは地下鉄で、女性客に嫌がらせをしていた男性3人組を偶然持っていた拳銃で皆殺しにしてしまう。以後アーサーは、自身の心にあった怒りを解放させていく。
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