パパが遺した物語が教えてくれた人生哲学
やり直したくてもリセットできないのが人生
映画を観ていると、過去の苦い記憶が鮮明に蘇ってきたのです。
それは、好きな人からの一度きりの告白を断ってしまった日のこと。同性愛者だとバレたのが怖かった私は、自分の気持ちに正直になれず、気のないフリをしてしまいました。その後、再び彼が私に気持ちを伝えてくることはありませんでした。その瞬間、私の人生のレールが違う方向に切り替わってしまったと気づくのはその何年もあとでした。
あの時、もし違う選択をしていたら、私の人生はどんな風に変わっていただろうか。そんな後悔が、時折、胸を締め付けるのです。でも、もちろん、時間は巻き戻せません。人生は、一度きりの選択の連続であり、やり直しはきかないのです。どんなに悔やんでも、過去の決断をなかったことにはできないのです。
ケイティの人生もまた、同じように、残酷な時間の中で進んでいきます。彼女が抱える心の傷、人間関係の困難さ、そして、父親との温かい思い出。それらは全て、彼女の一部として、逃れることのできない現実として、現在に重くのしかかってくるのです。
「今の自分は過去の自分が形成した」という考え方があるように、過去の出来事が、私たちの思考パターンや感情の基盤となり、物事の選択に影響しているのは疑いようがありません。特に、子供時代のトラウマ体験は、人格形成に深い影響を与えると言われています。
ケイティは、精神的に不安定な家庭環境で育ったことが、対人関係の困難さに繋がってしまいます。人を軽率に信用できず、愛を受け入れることに恐怖を感じてしまう。それは、過去の傷が、彼女の脆弱な心を守るために、無意識のうちに作り上げた機制なのかもしれません。
「パパが残した物語」は、甘い希望を抱かせてくれるような、生易しい映画ではありませんでした。人生は、時に厳しく、不条理で、過去の傷は簡単には癒えない。人間関係の問題も魔法のように解決するわけではない、と思い知らされます。
私たちは、ケイティのように、もがきながら現実と向き合って生きていくしかないのです。過去の傷と完全に折り合いをつけることは難しいですし、人間関係で再び傷つくこともあるでしょう。
それでも、痛みを抱えながら未来へ進んでいくのが私たちの人生です。たとえまた過ちを繰り返すことがあっても、 その度に深く反省し、 何かを学び、 そしてまた明日を迎える。
過去に執着するのではなく、 未来に希望を託すのでもなく、 今目の前に差し出された選択に真剣に向き合って生きなければならないよ。と観終わった瞬間に生きる現実を突きつけられるような気持ちになる作品でした。
「パパが残した物語」は、人生の甘さも厳しさも、包み隠さず描き出した深い映画です。人生はいつも簡単ではない。いつも楽ではない。いつも公平ではない。後悔しながら私たちは生きていかなければならない。 そんな人生の真実を、飾り気なく私たちに教えてくれます。この映画は、気持ちを入れ替えて明日を迎えたい夜、あなたの心に深い響きを届けるでしょう。
パパが遺した物語の基本情報
| 原題 | Fathers and Daughters |
|---|---|
| 公開日 | 2015-10-01 |
| 言語 | 英語 |
| 作品時間 | 116分 |
| 出演 | アマンダ・サイフリッド, ラッセル・クロウ, アーロン・ポール |
| 監督 | Gabriele Muccino |
あらすじ
1989年、ニューヨーク。小説家のジェイク・デイヴィスは、妻と7歳の一人娘ケイティと幸せな毎日を送っていた。しかしある日、車で交通事故を起こしてしまい、同乗していた妻が命を落としてしまう。自身も後遺症で長期入院を余儀なくされ、妻の姉エリザベスとその夫がケイティを預かることに。7ヵ月後、ようやく退院したジェイクがケイティを引き取りに行くと、エリザベスからケイティを養女にしたいとの申し出が。即座にこれを拒否したジェイクだったが、新作はまるで売れず、ケイティとの生活を守ることは困難を極めていく。25年後、大学院で心理学を学ぶケイティは、あるトラウマを抱え、自暴自棄な日々を送っていた。そんな時、父の小説の大ファンだという青年キャメロンと出会い、恋に落ちるのだったが…。
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